遺留分侵害額請求権と譲渡所得課税

令和元(2019)年7月1日より、これまでの遺留分減殺請求権が「遺留分侵害額請求権」とされる民法改正が適用されています。

 

改正前の遺留分減殺請求権は、これが請求された場合に物権的効果が生ずるものとされていました。

つまり、遺留分に応じて相続財産が共有の状態になると解されていたことになります。

これを譲渡所得課税の点から見ると、遺留分減殺請求権を受けたことによって不動産を分けても、その含み益に対して譲渡所得課税がされることは(原則として)ありませんでした。

 

ところが、本年の民法改正によって、遺留分に係る請求権の法的性質が「金銭債権」に変わりました。

遺留分の侵害については、金銭による請求を原則とすることとされたのです。

これによって、譲渡所得課税の取扱いも変更になると考えられています。

例えば、遺留分侵害額請求権の行使を受けたものの、支払いに充てることができる金銭がないため、相続財産である不動産を分けることで解決を図った場合に、「本来は金銭で支払うべきものを、不動産を処分して支払った」と取り扱われることになります。

従って、この時点で譲渡所得課税がなされることになるでしょう。

 

特に本年は民法改正の年に該当しますので、改正前後で取扱いが異なることになります。注意しましょう。

 

<今日の会計英単語>

相続税:Inheritance tax

贈与税:Gift tax

 

※この記事は、2019年9月17日現在の法令等に拠っています。個別具体的な事案につきましては、顧問税理士等へご相談ください。